◆ 『外泊』の背景事情について

1.韓米FTA締結と「非正規雇用者保護法」

 

2007630日、韓国盧武鉉政権は、アメリカとの間で、韓米FTA(自由貿易協定)を結びます。そして、翌7月1日、「非正規雇用者保護法」が施行されます。彼女たちが、『外泊』をはじめたのは、まさに、その2007630日夜でした!。

 

韓国では、経済のグローバル化の下、1997年には「IMF経済危機」が起こり、非正規雇用が急増していきました。2001年に360万人だった非正規雇用者は、2006年には5467000人と、5年で1.5倍に膨れ上がり、労働者全体の35.5%を占めるまでになりました。非正規労働者の賃金は正規労働者の約6割、その他の労働条件においても差別的で劣悪な処遇を受けており、「格差社会」が広がっていきました。

 

労働者たちは、韓米FTAが、経済のグローバル化を更に進め、人件費削減、雇用不安や労働条件の悪化を進めるのではないかと、危機感を募らせます。これに対し、政府は、「期間制および短時間労働者保護法(新規)」、「派遣労働者保護法(改正法)」、「労働委員会法(改正法)」からなる「非正規雇用者保護法」の制定をはかりました。

 

2.「非正規雇用者保護法」の内容と問題点

 

この法律は、①2年を超えて期間制(有期契約)労働者を使用した場合、無期契約を結んだとみなし、2年を超えて派遣労働者を使用した場合、直接雇用が義務付け、②同種または類似の業務を行う場合、非正規労働者(期間制、短時間、派遣全て含む)と正規労働者との間の差別処遇を禁止し、③地域労働委員会による罰則付きの差別是正命令によって差別是正をはかるいう、「画期的」な内容を持っていました。この法律により、非正規・正規間の差別は是正され、正規職への転換が促進すると、政府は宣伝しました。

 

しかし、この法律は、一方で、期間制(有期契約)に理由制限を設けず、「派遣」の対象業務も拡大してしまいました。また、2年以下の雇用期間での「雇止め」に制限を設けなかったため、適用逃れのための大量解雇が起こることが、当初から危惧されていました。つまり、抜け道だらけで、非正規労働者を、更に過酷な状況に追い込む危険性の高い法律だったのです。

 

3.イーランド労働者の闘い

 

 この危惧を現実のものとしたのが、イーランドの経営者だったのです。イーランドグループは、韓国の巨大流通グループであり、2006年にはフランス資本だったスーパーマーケット・チェーン「カルフール」を買収して、「ホームエバー」に名称変更していました。「非正規雇用者保護法」の施行を控えて、イーランドの経営者は、その適用を逃れるため、非正規労働者の大量解雇に踏み切り、「外注化」を強行しようとしたのです。一方で、「1000人を正規職化する」と言いながら、低い職務給の「分離職群」を作り、非正規並みの低い労働条件の「正規労働者」の群れを作り出そうとしました。これと闘ったのが、『外泊』の彼女たちの闘いだったのです。

 そのため、経済のグローバル化、新自由主義を進め、「規制緩和」「労働の柔軟化」を進める「資本」と、これに反対する「労働」との対立の、象徴的な闘いとなり、知識人や市民も巻き込んだ、大きな闘いとなっていきました。韓国の労働組合ナショナルセンターの1つ、民主労総(全国民主労働組合総連合)が支援に乗り出し、大規模な不買運動も組織されました。

 

4.女性労働者のおかれた状況

 また、なぜ、女性たちが「主役」とならざるを得なかったのか。そこに、根強く残る、「男は仕事、女は家庭」「男が主で、女は従」「男尊、女卑」といった、女性差別男女の伝統的な役割の強制がありました。

 

女性たちは、家庭において、家計簿をつけ、掃除をし、子育てをし、病人の看病や老人の介護などの「ケア」を「無償」で行うのが当然とされてきました。そのことが、簿記や会計、清掃、保育や看護、介護などの「ケア労働」を、「女の仕事」と見做し、軽視し、低賃金を当たり前とみなす状況をもたらしました。また、女性は、家事や育児に支障のない範囲で働くべき、女性には向いてないなどとして、「基幹的」な労働から排除され、「補助的」な労働を強いられてきました。そして、家庭でも職場でも、大黒柱は男性であって、女性は家計の「補助」だから、「補助的」労働だからと、低賃金が正当化されてきました。家父長制の伝統の下では、父親や夫に従い、従順で、我慢強いことが女性の美徳とされてきました。


 その結果が、サービス産業、非正規労働者の圧倒的多数が女性であり、劣悪な労働条件、安易に首切を許しがちな状況を生み出していったのです。

 

しかし、彼女たちは立ち上りました。家族を離れての、はじめての『外泊』が、この闘いだったのです!

 

※『外泊』の詳しい情報は、下記のホームページから得ることができます。

 

韓米FTA署名とニューコア イーランドの戦い http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/strike/2007summer/1183888701784Staff

 イーランド女性労働者が戦いに立ちあがった理由 http://www.labornetjp.org/worldnews/korea/strike/2007summer/1186756115292Staff

 政府の非正規雇用対策が裏目に 真夏の韓国の『騒然』
 http://www.news.janjan.jp/world/0709/0709140318/1.php

 http://www.news.janjan.jp/world/0709/0709140323/1.php

外泊weabak情報ホームページhttp://film.weabak.info/でも、関連する「用語」の解説を読むことができ、関連情報を知ることができます。上記のホームページにもリンクしています。

 

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